歯列矯正の代表的な治療法として、ブラケットと呼ばれる矯正装置を歯に着けて歯並びを整える治療法があります。
ブラケット装着による歯列矯正では裏側矯正と表側矯正の2種類があり、どちらの方法にするかは希望に応じて選ぶことが可能です。
しかし、はじめての歯列矯正ではどちらの方法が自分にとって最適な方法なのか、判断がしにくいという方も多いはずです。
そこで、こちらでは歯列矯正を始める前に知っておきたい裏側矯正と表側矯正の具体的な違いについて紹介します。
裏側矯正と表側矯正で仕上がりに違いはあるのか
裏側矯正や表側矯正と呼ばれるブラケット矯正は、一般的な歯列矯正の方法として採用されている治療法です。具体的な治療法としては、ブラケットと呼ばれる金属やセラミックでできた矯正装置を歯に装着し、歯を動かして歯列全体を矯正します。
矯正装置を歯の表面に着ける場合は表側矯正、反対に歯の裏側に着ける場合は裏側矯正と呼びます。矯正装置を裏側と表側どちらに着けるかは希望に合わせて選択できますが、最終的な仕上がりはどちらの方法をとっても大きな差はありません。
しかし、虫歯リスクや治療手順、治療にかかる費用などには違いがあるため、それぞれのメリット・デメリットをよく理解して歯列矯正を始めることが大切です。
裏側矯正と表側矯正の違い
裏側矯正と表側矯正はどちらも仕上がりに違いはないものの、矯正装置を歯に着ける位置が異なることから治療手順や治療期間、かかる費用などには違いがあります。具体的な裏側矯正と表側矯正の違いとしては、以下のことが挙げられます。
ブラケットを装着する位置
裏側矯正と表側矯正では、矯正装置を歯に装着する位置に違いがあります。裏側矯正とは舌側矯正、リンガル矯正とも呼ばれ、歯の裏側に矯正装置を着ける方法です。
一方、歯の表側に矯正装置を着ける方法を表側矯正といい、従来の歯列矯正としてよく知られている方法となります。
表側矯正は歯の表側に矯正装置を着けるため、治療中は強制装置が目立ってしまうでしょう。近年、歯の矯正中ということが分かりにくい透明色や白色のプラスチック製やセラミック製の矯正装置が主流となっており、以前よりは目立ちにくい工夫がなされています。
また、裏側矯正ではそもそも歯の裏側矯正装置を着けるため、矯正装置がほぼ目立たないです。歯の矯正が目立たせたくない場合は、裏側矯正を選ぶ方がよいでしょう。
虫歯や口内炎のリスク
矯正装置を歯に着けることで歯磨きがしにくいという点は、どちらの矯正でも同じです。強いて言えば、歯の裏側は唾液が触れる量が多くなるため、表側矯正と比べ裏側矯正のほうが唾液のもつ抗菌作用によって虫歯ができにくいでしょう。
矯正装置を着けてしまうと、通常よりも虫歯リスクが高くなることは避けられません。毎日丁寧に歯磨きするのはもちろん、フロスの使用やフッ素による予防法を取り入れてください。
また、裏側矯正も表側矯正も治療開始から間もない頃は、口の中の違和感から矯正装置が舌や頬にあたりやすく、口内炎ができる可能性があります。
矯正装置に慣れるまでには1〜2週間ほどかかりますが、口内炎ができてもすぐに改善するのでさほど大きな心配はいりません。もし何度も口内炎ができてしまう場合は、保護用ワックスを使用し患部を保護しましょう。
食事への影響
矯正装置を使用した歯列矯正では、ワイヤーやゴムの力を利用して歯を動かし矯正するため、治療はじめはどうしても痛みがでやすいでしょう。とくに、表側矯正では硬いものを食べる際に痛みがでやすい傾向にあります。
また、裏側矯正では舌などに矯正装置があたりやすいため、食べ物の硬さに関係なく食べづらさを感じることがあります。矯正装置を着けた後や、装置を調整した直後に痛いと感じる方も多いです。そうした痛みが治まるには1か月ほどかかるでしょう。
治療手順
歯の表側と裏側では歯の形が異なるため、矯正方法ごとに治療手順が違います。
表側矯正では歯の形に合わせてブラケットをひとつずつ調整しながら装着しますが、裏側矯正ではそれぞれの歯の形に合わせた矯正装置をオーダーメイドで作成してから装着するという流れです。
歯の裏側は見えにくく歯の形も複雑であるため、治療前には事前にとった歯型模型に合わせて適切なブラケットの位置を確認してから装着します。
治療費用
治療にかかる費用は、一般的に表側矯正よりも裏側矯正のほうが費用は高くなりやすい傾向にあります。
その理由としては、裏側矯正は患者さんごとにオーダーメイドの矯正装置を作成するため、技工料が別途発生します。ただし、表側矯正でも審美性にこだわった矯正装置を着ける場合は、その分治療費用も高額になるので注意です。
治療期間
矯正装置を使用した歯列矯正では、一般的に治療にかかる期間は約2〜3年となっており、矯正装置の位置によって治療期間が左右されることはありません。
治療期間は治療開始前の歯の噛み合わせの状態に左右されることが大きく、個人差があります。
裏側矯正と表側矯正はそれぞれどのような人におすすめ？
裏側矯正と表側矯正は、どちらをとっても治療期間に大きな差はありません。治療中の見た目や費用、治療手順などには違いがあり、どちらの方法をとるかは希望次第です。
以下では、裏側矯正と表側矯正それぞれに向いている人の特徴をまとめています。
裏側矯正に向いている人
裏側矯正は歯の矯正をしていることを周囲にばれることなく治療できるため、矯正を他人に知られたくないという人に向いています。
また、裏側矯正は虫歯になりにくいというメリットもあるため、矯正治療することによる虫歯のリスクを少しでも減らしたいという方にもおすすめです。
しかし、裏側矯正は歯型模型をとって、オーダーメイドの矯正装置を作成するため費用がやや高額になります。治療中の見た目を重視したいという場合は、裏側矯正が向いているといえるでしょう。
表側矯正に向いている人
表側矯正は裏側矯正と比べて比較的費用が安く済むため、矯正治療にあまりお金をかけたくないという方に向いています。
また、表側矯正は舌に矯正装置があたることがないため、食事中の違和感をできるだけ少なくしたいという方や、発音に支障が出ないようにしたいという方にも向いています。
しかし、裏側矯正と比べて表側矯正は矯正治療中の見た目がどうしても目立ってしまいがちです。その点を考慮しても別に問題ないという方なら、表側矯正がおすすめといえるでしょう。
なお、費用は少し高くなってしまいますが、ワイヤーとブラケットの組み合わせを変えることで矯正装置を目立たなくすることは可能です。
【まとめ】
歯列矯正のなかでもブラケット矯正はスタンダードな治療法で、歯の裏側で矯正を行う裏側矯正と歯の表側で矯正を行う表側矯正の2種類があります。
裏側矯正は矯正治療中の見た目が目立たない点が人気である一方、完全カスタムの矯正装置を作成することから費用は高くなることが想定されます。
一方、表側矯正はリーズナブルな矯正装置を選べば費用を安く抑えられて、活舌の悪化や食べづらさを軽減したいという希望にもマッチする矯正方法です。
どちらの矯正にするかは、診断結果にもよりますが基本的にはできる限り希望に合わせて選べます。まずはそれぞれの特徴やメリットなどをよく理解することが大切です。
矯正治療を開始すると、矯正装置を装着する期間は短くても数ヶ月は要します。そのため、矯正治療を計画する際は医師とよく相談のうえ、ライフスタイルや希望に応じて自分に合った後悔のないように選択しましょう。
