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歯科矯正で面長は治せる?治療により悪化する可能性や対策は?

出典・データソース:本記事は、歯科矯正治療に伴う顔貌・軟組織の変化を検討した査読付き文献(システマティックレビュー・メタアナリシスを含む)を主な根拠として作成しています。個々の知見については本文中および文末の参考文献に出典を明記し、根拠の強さを「強い根拠」と「傾向・限定的な根拠」に区別して記載しています。診断・治療方針は個々の症例により異なるため、最終的な判断は担当医との相談のもとで行ってください。

歯科矯正で歯並びが整うと、面長な印象が和らぐことがあります。せっかく治療を受けるのであれば、お顔の印象もきれいにしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。本記事では、歯科矯正で面長に変化が起こりやすい歯並びや、注意すべきケースについて、研究データを交えて解説します。

コンプレックスだった歯並びを歯科矯正で改善し、「お顔の面長な印象も整えたい」と考えている方は少なくありません。一方で、「治療で後悔したくない」という気持ちから、なかなか矯正に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、歯科矯正で面長の改善が期待できる歯並びと、逆に面長な印象が強まる可能性のあるケースを、エビデンスにもとづいて整理します。歯科矯正を検討している方、面長な印象でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

歯科矯正で面長は治せる?

歯科矯正を受けて歯並びや噛み合わせが改善されると、お口の機能が向上するだけでなく、面長などの印象がすっきりして見えることがあります。なかでも、歯並びや噛み合わせの乱れが口元の突出や噛み合わせの深さに関係している場合は、歯の移動にともなって口元や下顔面の見え方が変化し、面長な印象がやわらぐ可能性があります。

ここで大切なのは、「面長」の原因を切り分けて考えることです。面長な印象は、上顎から下顎までの顔の高さ(垂直的な顔面高)や、噛み合わせの深さ、口元の突出、そして骨格そのものの形など、複数の要素が組み合わさって生まれます。このうち歯の位置や噛み合わせに由来する部分は歯科矯正で変化が期待できますが、骨格の大きさや位置そのものに強い原因がある場合は、矯正治療だけで面長を大きく改善することは難しく、外科手術(外科的矯正治療)を併用しないと十分な変化が得られないケースもあります。

また、お顔の輪郭やおでこの広さ、鼻の高さなど、歯並びとは直接関係のない要素が面長の主な要因になっている場合も、歯科矯正で面長を改善させることは難しいと考えられます。歯科矯正はあくまで「歯と噛み合わせを整える治療」であり、その結果として顔貌が変化することはありますが、美容整形のように輪郭そのものをデザインする治療ではない、という点は押さえておきたいポイントです。

面長が治る見込みがある歯並び

ここでは、歯科矯正で面長な印象の改善が見込める代表的な歯並びについて解説します。いずれも「必ず改善する」というものではなく、原因が歯や噛み合わせにある場合に変化が期待できる、という位置づけである点にご注意ください。

出っ歯や口ゴボ

出っ歯や口ゴボと呼ばれる歯並びは、上下の前歯が前方に傾いていることで口元が盛り上がって見えるものです。口を閉じようとすると唇やあごに力が入り、鼻の下(人中)が引き伸ばされて緊張した表情になりやすく、その結果として面長な印象を与えることがあります。

歯科矯正で前歯の突出が改善されると、口元の盛り上がりが落ち着き、無理な力を入れなくても自然に口を閉じられるようになることがあります。前歯を後退させる治療では、上下の唇が後方に下がり、鼻の下から唇にかけてのラインがすっきりする傾向が、複数の研究で報告されています。

エビデンスの面では、抜歯をともなう矯正治療により上唇・下唇が後退し、口元の突出感が軽減することがシステマティックレビュー・メタアナリシスで示されています(Konstantonis et al., 2018)。ただし、こうした軟組織の反応には個人差が大きく、特に上唇の反応は下唇よりも予測が難しいことも知られています。「前歯を下げれば必ず横顔が理想的になる」わけではなく、もともと口元が突出している方ほど恩恵を受けやすい一方、もともと口元が引っ込み気味の方では逆効果になり得る、という点が重要です(傾向レベルの知見)。

オープンバイト(開咬)

オープンバイト(開咬)とは、奥歯でしっかり噛んでも前歯が噛み合わず、上下の前歯のあいだにすき間が残る噛み合わせを指します。前歯で噛み込めないため口元が安定せず、口が開き気味になって面長な印象を与えることがあります。

開咬の治療で奥歯を適切な位置に整えたり、必要に応じて奥歯を圧下(歯ぐき側に沈める方向へ移動)させたりすると、下あごがわずかに前上方へ回転し、下顔面の高さが減少することが報告されています。矯正用アンカースクリューなどの骨格性固定を用いた奥歯の圧下により、前顔面高・下顔面高が減少し、下顎が反時計回りに自家回転する傾向が、システマティックレビュー・メタアナリシスで示されています(Omidkhoda et al., 2023)。これにより口元が閉じやすくなり、面長な印象が和らぐ場合があります。

ただし、この変化は数ミリ単位のものであり、治療後の後戻り(再び開咬に戻る傾向)も一定の割合で起こることが指摘されています。効果と安定性の両面から、適応の見きわめが大切です。

受け口

受け口は歯科用語で反対咬合といい、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている噛み合わせです。下あごが前方や下方に目立つことで、相対的に面長な印象を与えることがあります。

受け口のうち、歯の傾きや前後関係が主な原因となっているケースでは、歯科矯正で前歯の被蓋(上下の重なり)を整えることで、口元や下顔面の見え方が変化し、面長な印象が和らぐことがあります。特に成長期のお子さまでは、早めに治療を始めることで良好な結果を得やすい場合があります。

一方、下あごの骨自体が大きい・前に出ているといった骨格性の反対咬合では、歯の移動だけで輪郭を変えることは難しく、成長終了後に外科的矯正治療が選択されることもあります。骨格性のClass III(下顎前突)に対する成長期の整形力を用いた治療でも軟組織の変化が生じることが報告されていますが、その効果や適応には条件があるため、担当医による診断が欠かせません。

しゃくれ

いわゆる「しゃくれ」と呼ばれる状態は、下あごが前方に突出して見えることで、お顔全体が長く感じられ、面長な印象につながることがあります。

しゃくれには、骨格そのものに由来するものと、歯並び・噛み合わせに由来するものがあります。歯並びが主な要因となっている場合は、歯科矯正で噛み合わせを整えることで印象が変化することがありますが、骨格性の要素が強い場合は矯正単独での改善が難しく、外科的なアプローチが必要になることもあります。自己判断せず、まずは精密検査で原因を切り分けることが大切です。

歯科矯正で面長が悪化する可能性は?

歯科矯正で歯並びや噛み合わせが整うと、お顔の輪郭がすっきり見えることがある一方で、条件によっては面長な印象が強まってしまう場合もあります。お顔の印象も整えたいと考えている方は、次のような要因を知っておくと安心です。

不要な抜歯

抜歯が本来は不要なケースにもかかわらず抜歯をして治療を進めると、口元のボリュームが過度に減り、面長な印象に傾くことがあります。前述のメタアナリシスでも、抜歯治療は口元を後退させ横顔を平坦化させる方向に働くことが示されており、もともと口元が突出していない方では、ほうれい線が目立ったり口元がさびしく見えたりする可能性があります(Moon et al., 2021)。治療を始める前に、本当に抜歯が適した症例なのかを十分に確認しておくことが重要です。

非抜歯によるスペース不足

反対に、本来は抜歯が望ましいケースで、健康な歯を残すために非抜歯で治療を進めることもあります。非抜歯の矯正では歯を並べるスペースが不足しやすく、歯列を側方へ拡大したり前歯をやや前方に位置づけたりして対応する場合があります。その結果、歯列に沿って人中や唇が前方に盛り上がり、かえって口元が突出して面長に見えてしまうことがあります。抜歯・非抜歯のいずれにもメリットとリスクがあり、症例に応じた見きわめが欠かせません。

口まわりの筋力低下

矯正治療中は、装置の違和感や歯を動かす際の痛みにより、噛む回数や食事量が減ることがあります。お口まわりを動かす機会が減ると、筋力が低下して頬がたるんだり、口元にシワが寄ったりと、お顔全体が老けた印象に変化することもあります。これは面長というより「間延びした印象」につながる要素として注意したいポイントです。

前突改善にともなう人中の見え方の変化

出っ歯や口ゴボなど前歯が突出した歯並びを改善すると、それまで前歯に押し出されていた上唇が後退し、相対的に人中(鼻の下)が長く見えることがあります。人中が長く見えるとお顔が間延びした印象になり、「面長になった」と感じる方もいます。これは実際に顔が長くなったというより、口元のバランスが変わったことによる見え方の変化であることが多く、事前のシミュレーションや説明で理解しておくことが大切です。

面長にならないためにできること

決して安くない治療費を払って受けた歯科矯正で、お顔の印象がかえって気になるようになってしまうと、「治療を受けなければよかった」という気持ちになりかねません。裏を返せば、お口に合った適切な診断と治療計画のもとで矯正が行われれば、治療によって面長になることはほとんどありません。ここでは、面長を避けるために気をつけたいポイントを解説します。

丁寧な検査をしてくれる矯正歯科を選ぶ

面長を避けるうえで最も重要なのが、治療を受ける歯科医院選びです。治療を始める前に精密検査を行い、お顔全体のバランスやあごの骨の位置・傾き、垂直的な顔面高、口元の突出量などを十分に考慮した治療計画を立ててくれる医院を選びましょう。検査が不十分なまま治療を始めると、顔貌の印象だけでなく、歯並びや噛み合わせそのものが十分に改善されない可能性もあります。

信頼できる歯科医師を見つける

歯科矯正は長期にわたる治療のため、歯科医師との信頼関係も大切です。精密検査の丁寧さに加えて、さまざまな症例に対応できる経験と技術があるか、治療内容や進み具合をわかりやすく説明してくれるかを確認しましょう。小さな疑問も気軽に相談できる関係を築けると、治療への不安が和らぎ、納得して通院を続けやすくなります。

装着時間などの指示を守る

マウスピース型矯正装置は取り外せる手軽さがある一方、装着時間が守られないと歯に十分な矯正力がかからず、計画どおりの結果が得られません。ゴムかけなどの補助的な処置が必要な場合も、指示どおりに使用することが大切です。計画に沿って歯を動かすことは、狙った顔貌の変化を得るうえでも、面長を避けるうえでも重要です。

口まわりの筋力低下を防ぐ

矯正器具により食事がしづらく、回数が減ったり偏った食事になったりすると、口まわりの筋肉が衰えるだけでなく栄養不足を招く恐れもあります。食べにくさを感じるときは、回数より質を意識し、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。あわせて、ご自宅で口まわりのトレーニングを行うのも有効です。口を大きく開けて「あ・い・う・え・お」と動かす運動は、装置をつけたままでも取り組みやすい方法のひとつです。

まとめ

面長は大人っぽく落ち着いた印象を与える一方で、老けた印象につながることもあり、歯科矯正で改善したいと考える方は少なくありません。研究データからは、出っ歯・口ゴボの改善による口元の後退や、開咬治療にともなう下顔面高の減少など、原因が歯や噛み合わせにある場合には面長な印象が和らぐ可能性が示されています。一方で、不要な抜歯やスペース不足の非抜歯など、診断と計画次第では面長な印象が強まることもあります。だからこそ、丁寧な検査と適切な治療計画、そして歯科医師の指示を守ることが、後悔しない矯正のカギになります。

銀座矯正歯科では患者さまを女性に限定しているため、女性特有のお悩みや仕上がりの細かな調整も気軽にご相談いただけます。治療中の見た目が気になる方には、周囲から気づかれにくい裏側矯正(舌側矯正)やマウスピース型矯正装置をご提案しています。お口の現状を知りたい方、矯正治療について詳しく知りたい方は、当院までお気軽にご相談ください。


監修

中嶋 亮(なかじま りょう) 銀座矯正歯科 院長/医療法人社団真美会 理事長。矯正歯科を専門とし、臨床のほか歯科矯正学セミナーの企画・講演を多数行う。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状やお口の状態は個人差が大きいため、実際の治療にあたっては担当医にご相談ください。


参考文献

Konstantonis, D., Vasileiou, D., Papageorgiou, S. N., & Eliades, T. (2018). Soft tissue changes following extraction vs. nonextraction orthodontic fixed appliance treatment: A systematic review and meta-analysis. European Journal of Oral Sciences, 126(3), 167–179. https://doi.org/10.1111/eos.12409

Moon, S., Wang, Y., Hwang, S., Kim, K., & Kim, S.-J. (2021). Extraction vs. nonextraction on soft-tissue profile change in patients with malocclusion: A systematic review and meta-analysis. BioMed Research International, 2021, 7751516. https://doi.org/10.1155/2021/7751516

Rongo, R., Bucci, R., Adaimo, R., Amato, M., Martina, S., Valletta, R., & D’Antò, V. (2021). Three-dimensional soft tissue changes in orthodontic extraction and non-extraction patients: A prospective study. Orthodontics & Craniofacial Research, 24(4), 181–189. https://doi.org/10.1111/ocr.12506

Omidkhoda, M., Bardideh, E., Jahanbin, A., & Zarei, M. (2023). Effects of posterior intrusion using skeletal anchorage on treating anterior open bite: A systematic review and meta-analysis. Journal of Dental Research, Dental Clinics, Dental Prospects, 17(4), 196–204. https://doi.org/10.34172/joddd.2023.40754

監修者

銀座矯正歯科 院長 中嶋 亮|東京都で裏側矯正を専門に行う矯正専門歯科「銀座矯正歯科」

院長 中嶋 亮 | Ryo Nakajima

日本大学松戸歯学部卒業後、同大学大学院にて歯科矯正学を専攻し修了。大学病院での研鑽を経て、2012年より「銀座矯正歯科」に勤務し、数多くの裏側矯正や複雑な症例に携わる。2021年に院長、現在は理事長として診療にあたる。見た目の美しさと咬合機能の両立を重視し、特に舌側矯正やデジタル技術を活用した精密治療に注力。患者一人ひとりの生活背景に寄り添い、長期的な健康と自然な笑顔を引き出すことを理念としている。

【略歴】

【主な所属学会】

【論文・学会発表】

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