学会活動から日常診療へ ― デジタル矯正の新しい波
第4回日本デジタル矯正歯科学会
2025年9月14日、東京科学大学にて 第4回日本デジタル矯正歯科学会 学術大会・総会 が開催され、認定医試験も無事終了しました。ご参加・ご協力くださった多くの先生方ならびに協賛企業の皆様に深く感謝申し上げます。

今回のテーマと学術的議論
今回のテーマは 「デジタルで治療・診断の質を高める」。AI、3Dプリンティング、顔貌スキャニングなどの最新技術が矯正治療にどのように役立つのかを、多角的に議論する貴重な機会となりました。

矯正治療の本質と当院での取り組み
矯正治療は単に歯を並べるだけではなく、お顔全体の調和や笑顔の美しさを追求する医療です。当院でもフェイススキャナを導入し、Face-Driven Dentistry(顔貌主導型の歯科医療) を実践しています。治療前にシミュレーションを行うことで、治療後の笑顔や横顔を可視化し、安心して治療を受けていただける体制を整えています。
デジタル技術の臨床的意義
学術的な視点からも、デジタル技術は診断の精度向上、治療計画の個別化、治療期間の短縮に大きく寄与することが明らかになっています。認定医試験を通じて、これらの技術を正しく活用する力が、今後の矯正専門医にますます求められることを強く感じました。
日本の先生方と最先端の取り組み
AIの進化の凄まじさは日常生活の中で感じる事が多くなっていますが、矯正歯科の分野では診査診断に留まらず、医院運営に役立つツールも生まれています。
- 米国に活躍の場を移した 濱中僚先生
- 歯科と通信技術を結びつけるベンチャー企業を牽引する 宇野澤元春先生
- 卓越した臨床とAIベースの診断ツールを開発する 綿引淳一先生
Japan made、Japan quality での歯科の創造は驚きと感動に満ちています。
DIP CephとMFTへのAI応用
特に綿引先生が提供している DIP Ceph という診断ツールには驚かされました。歯科臨床のレベルの高さはSJCDでのご活躍から存じ上げていましたが、ソフトウェア開発まで手がけていらっしゃるとは…
MFT(筋機能訓練)の効果測定へのAI導入は「有りそうで無かった」ものです。当院でも成人のMFTをテーマにした取り組みを始めたところですが、すでに形にされていました。一般提供が開始された際には、ぜひ導入を検討したいと思います。
フェイススキャン技術と未来の展望
RAYFaceなどのフェイススキャン技術は顎顔面形態の診査に用いられるものですが、その先には「時間軸を持ったデータ」としての活用が考えられます。
時間軸を持ったデータは治療効果の予測と確認、つまり歯科治療のシミュレーションとフィードバックに用いることが可能です。
現時点での仮想患者(Virtual Patient, Dental Avatar)は顔貌表面と硬組織(歯や骨)、脈管系(神経や血管)の情報だけを扱っています。ここに顎運動や筋の解剖情報が入れば真の Digital Twin が完成します。
さらに、宇野澤先生が先端を走るAR技術や、濱中先生の有限要素解析に基づく患者ごとのバイオメカニクス情報が加われば日本の歯科の未来はより明るいものになるでしょう。
歯科界への期待と課題
行政がもっと歯科に力を入れてくれればと感じます。国民皆保険での歯科治療は「健康を維持する最低限の治療」と言われますが、少し先を見据えた技術や材料の開発にも、その負担を割いてよいのではないでしょうか。
まとめと今後の姿勢
今後も学会活動で得られた最新の知見を日々の臨床に活かし、
- 患者さんにはより快適で確かな矯正治療を
- 同業の先生方には情報共有を通じて矯正歯科の発展に貢献
できるよう、研鑽を続けてまいります。
日本デジタル矯正歯科学会では学術担当理事を拝命しています。
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大会長・成田先生(自由が丘矯正歯科)
