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歯科矯正した芸能人は?装置別に見る矯正の効果と「芸能人が載っている医院HP」の正しい見方

本記事の出典・データソース
厚生労働省「医療広告ガイドライン」(医療法第6条の5に基づく告示・通知)/矯正装置の比較に関する系統的レビュー5報(Angle Orthodontist、AJO-DO、Oral Health & Preventive Dentistry 掲載、いずれもDOIを検証済み)/各芸能人ご本人が番組・公式ブログ・SNSで公表した内容/銀座矯正歯科の臨床経験(舌側矯正を中心に1998年開院)。
本文中のエビデンスは【強い根拠】【傾向】【根拠は弱い】の3段階で明示し、誇張はしていません。

歯並びが整うと、笑顔の印象は大きく変わります。テレビや動画で見かける芸能人の中にも、歯科矯正を経て「口元が変わった」と話題になる方は少なくありません。

一方で、矯正歯科の情報を探していると、医院のホームページに芸能人が登場しているのを見かけることがあります。「有名人が通っている医院なら安心なのでは?」と感じる方もいるでしょう。

この記事では前半で、ご本人が歯科矯正を公表している芸能人を装置の種類ごとに整理し、それぞれの装置の特徴を科学的根拠とともに解説します。後半では、医院のホームページに芸能人が掲載されている場合に、どこを見て判断すべきかを、厚生労働省の医療広告ガイドラインをもとにお伝えします。

1. なぜ「芸能人の歯科矯正」が注目されるのか

芸能人は人前に出る仕事です。矯正装置が見えることへの抵抗感、発音への影響、治療期間中の見た目——これらは、実は接客業や営業職、結婚式や前撮りを控えた一般の方が抱く悩みと同じです。

だからこそ、「あの人はどの装置を選んだのか」「どのくらいの期間で終わったのか」が参考になります。ただし芸能人の情報は、ご本人が公表した範囲でしか分かりません。歯並びの診断内容や抜歯の有無、治療の詳細を外部から推測して断定することはできないため、本記事では公表された事実にとどめて紹介します。

また、口元の印象は歯並びだけで決まるものではありません。上顎前歯の位置、唇の厚み、鼻と顎の関係(いわゆるEライン)など、顔全体のバランスの中で評価する必要があります。当院では顔貌主導で治療設計を行うFDD(Face Driven Dentistry)の考え方を採用しており、詳しくはEラインと矯正治療の関係についての記事で解説しています。

2. 装置別に見る、歯科矯正を公表した芸能人

以下は、ご本人が番組・公式ブログ・SNSなどで矯正治療を公表している方を、公表された装置の種類で分類したものです(2022年時点の公表情報をもとに整理)。

装置の種類公表している芸能人(敬称略)公表の主な媒体
表側矯正くっきー!、前田敦子、矢作兼、NiziU マコ番組出演時の装置、本人発言
裏側矯正マツコ・デラックス、川村エミコ、指原莉乃、本田翼番組での公言、公式ブログ、SNS
ハーフリンガル矯正藤井風、八田亜矢子、NiziU リク番組・公式ブログ
マウスピース矯正飯田圭織、兼近大樹、中野美奈子、峯岸みなみ公式ブログ、番組での発言

※治療期間として、マツコ・デラックスさんは約3年、川村エミコさんは5年10か月、指原莉乃さんは2年以上と、いずれもご本人が公表しています。期間は歯並びの状態や治療方針で大きく異なります。

2-1. 表側矯正

歯の表面にブラケットとワイヤーを装着する、もっとも歴史のある方法です。ほぼすべての歯並びに対応でき、治療の予測性が高いことが特長です。

  • 【強い根拠】固定式装置による包括的矯正治療は、客観的な咬合評価指標(PAR、ABO-OGS)で高い改善効果が繰り返し示されています。
  • デメリットは装置が見えること。白いセラミックブラケットや白くコーティングしたワイヤーで目立ちにくくする選択肢があります。

2-2. 裏側矯正(舌側矯正)

装置を歯の裏側に付けるため、口を開けても外からほとんど見えません。当院が1998年の開院以来、専門的に取り組んできた方法です。

  • 【強い根拠】表側矯正と比較して、治療結果(歯の最終的な位置)に大きな差はないとする系統的レビューが複数あります(Long et al., 2013; Ata-Ali et al., 2016)。
  • 【傾向】治療初期に発音のしづらさや舌の違和感が出やすい傾向があります(Long et al., 2013; Khattab et al., 2013)。ランダム化比較試験では、この影響は装着後1か月程度をピークに軽減していくことが報告されています。
  • 【傾向】表側矯正に比べて頬や唇の痛みは少なく、舌の痛みは多いという「痛みの場所の違い」が示されています。

発音への影響は、装置の薄さ(オーダーメイドの薄型ブラケット)や、前歯の位置設計によって差が出ます。当院では裏側矯正の治療ページで装置の仕様を説明しているほか、キスや会話への影響についての記事でも詳しく取り上げています。

2-3. ハーフリンガル矯正

上の歯は裏側、下の歯は表側に装置を付ける方法です。笑ったときに見えやすい上の歯だけを裏側にすることで、費用を抑えながら見た目の配慮ができます。詳しくはハーフリンガル矯正の解説記事をご覧ください。

  • 下の歯の表側装置は、口を大きく開けなければ目立ちにくい位置にあります。
  • 上下とも裏側にする場合と比べ、舌の違和感が出る範囲が上だけに限られるため、慣れやすいと感じる方が多いです(当院の臨床経験による【根拠は弱い】)。

2-4. マウスピース矯正

透明な樹脂製のマウスピースを段階的に交換して歯を動かす方法です。取り外しができ、食事や歯みがきが通常どおり行えます(当院のマウスピース矯正)。

  • 【強い根拠】歯の並びを揃える・レベリングする動きや、前歯の圧下(歯を沈める動き)には有効性が示されています(Rossini et al., 2015)。
  • 【強い根拠】一方で、前歯の挺出(引き出す動き)、丸い歯の回転、歯の傾きの細かな制御は苦手とされており、複雑な症例では固定式装置のほうが確実な場合があります(Rossini et al., 2015)。
  • 【傾向】治療期間中のプラーク(歯垢)付着は固定式装置より少ない傾向があります(Oikonomou et al., 2021)。ただしエビデンスの確実性は低〜非常に低いと評価されています。
  • 最大の注意点は1日20時間以上の装着を自己管理する必要があること。装着時間が守れないと治療は進みません。

芸能人の方がマウスピース矯正を選ぶケースが多いのは、撮影や収録の際に外せるという事情も影響していると考えられます。ただし「外せる=いつでも外していい」ではないことは、治療を検討する誰にとっても重要なポイントです。

矯正装置4種(表側・裏側・ハーフリンガル・マウスピース)を、装置の目立ちにくさ・発音への影響・適応症の広さ・自己管理の負担の4項目で4段階比較したインフォグラフィック。裏側矯正は目立ちにくさが最高評価、マウスピース矯正は自己管理の負担が大きいことを示す

3. 「ビフォーアフター」写真だけでは分からないこと

芸能人の矯正前後を比較する記事や動画は数多くありますが、写真から読み取れることには限界があります。

  1. 顔全体の変化は歯並びだけが原因ではない
    年齢による輪郭の変化、体重、メイク、撮影角度や照明が印象を大きく左右します。
  2. 抜歯の有無や治療方針は外部から分からない
    同じ「出っ歯が治った」ように見えても、歯を動かした方向や量は症例ごとに違います。矯正治療の方針は、精密検査(レントゲン・3D顔面スキャン・歯型)をもとに個別に決まるものです。
  3. 治療後の保定(後戻り防止)が写っていない
    矯正治療は装置を外して終わりではなく、リテーナーで歯並びを維持する期間が必要です。

当院ではRAYFaceによる3D顔面スキャンとiTeroによる口腔内スキャンを組み合わせ、「歯を動かすと顔がどう変わるか」を治療開始前にシミュレーションしてご説明しています。

4. 医院HPに芸能人が載っていたら——医療広告ガイドラインの考え方

ここからが本記事の後半です。矯正歯科を探していると、ホームページに芸能人やインフルエンサーが登場している医院を見かけることがあります。これをどう受け止めるべきでしょうか。

まず前提として、医療機関のホームページは医療法第6条の5に基づく「医療広告」に該当し、厚生労働省の「医療広告ガイドライン」の規制を受けます。2018年の医療法改正で、ウェブサイトも広告規制の対象になりました。

このガイドラインに照らすと、芸能人の掲載には次のような論点があります。

4-1. 「著名人も当院で治療を受けています」は比較優良広告に当たりうる

医療広告ガイドラインは、他の医療機関より優れていると誤認させる「比較優良広告」を禁止しています。ガイドラインの解説では、著名人が受診していることを強調する表現は、その医院が優れているかのような印象を与えるため、比較優良広告に該当しうる例として挙げられています。

したがって「芸能人の○○さんも通院」「タレント多数来院」といった表現は、それ自体がガイドライン上問題となる可能性があります。芸能人が掲載されている=優れた医院、という受け止め方は、ガイドラインが防ごうとしている誤認そのものだと言えます。

4-2. 「体験談」は広告に載せられない

治療の内容や効果に関する患者の体験談は、医療広告ガイドラインで広告不可とされています。個人の感想は他の患者にも同じ結果が得られるとの誤認を招くためです。

芸能人が「ここで矯正して人生が変わった」と語る形式のコンテンツは、この体験談規制に抵触する可能性があります。

4-3. ビフォーアフター写真には「限定解除」の要件がある

治療前後の写真は、それだけを掲載すると誤認を招くとして原則禁止ですが、治療内容・費用・主なリスクや副作用を併記するなどの要件(限定解除要件)を満たせば掲載できます。

写真が並んでいるだけで、費用やリスクの説明がない場合は、その医院の情報の出し方に注意が必要です。

4-4. 学会の認定医・専門医は「広告できる事項」

一方で、日本矯正歯科学会など厚生労働省に届け出た学会の認定医・専門医資格は、広告可能な事項として明確に認められています。「誰が通ったか」ではなく「どんな研修と審査を経た歯科医師が治療するか」は、ガイドラインが患者に伝えるべきと考えている情報です。

認定医制度の詳細や、「認定医ではない歯科医師が矯正をしている場合」の考え方については、矯正歯科の認定医についての記事にまとめています。

4-5. 掲載そのものが違法とは限らない

誤解のないように補足すると、芸能人がホームページに登場していることが即座に違法ということではありません。表現の仕方——優良性を強調していないか、体験談になっていないか、限定解除要件を満たしているか——が判断のポイントです。

医院を選ぶ側としては、芸能人の有無ではなく、費用・期間・リスクがどれだけ具体的に書かれているか、治療する歯科医師の資格と経歴が明示されているかを見ることをおすすめします。

医院ホームページで芸能人掲載を見たときの5つのチェックポイントを示すインフォグラフィック。注意して見たい表現として「著名人が当院で治療と強調」「患者・芸能人の体験談」「ビフォーアフター写真だけ」の3点、確認したい情報として「認定医・専門医資格の明示」「費用・期間・リスクの記載」の2点を配置

5. 芸能人の事例から学べる、医院選びの本質

ここまでの内容を、矯正治療を検討する方の視点でまとめます。

① 装置選びは「隠したいか」「自己管理できるか」「症例の難易度」で決まる
芸能人が選んだ装置は、その人の仕事と生活に合わせた選択です。裏側矯正は見えにくい反面、初期の発音への影響があります【傾向】。マウスピース矯正は取り外せる反面、装着時間の自己管理が結果を左右します【強い根拠】。どの装置が合うかは、精密検査をもとに歯科医師と相談して決めるものです。

② 期間には幅がある
公表されている芸能人の治療期間だけでも2年〜6年近くと幅があります。「短期間で終わる」と断定する情報には注意が必要です。

③ ホームページは「誰が出ているか」より「何が書いてあるか」
医療広告ガイドラインは、患者が適切に医院を選べるように作られたルールです。芸能人の掲載よりも、費用・リスク・資格の記載が具体的かどうかを確認してください。医院選びの基準は矯正歯科の選び方完全ガイドでも整理しています。

④ 迷ったら専門医院で検査を受ける
歯並びや顔貌の状態は一人ひとり違います。当院では初回の無料相談で、3D顔面スキャンと口腔内スキャンをもとに、装置の選択肢と概算費用をご説明しています。

まとめ

多くの芸能人が歯科矯正を経験していることは、歯並びに悩む方がそれだけ多いことの表れでもあります。表側・裏側・ハーフリンガル・マウスピースの各装置には、それぞれ科学的根拠に基づくメリットと注意点があり、どれが「一番良い」というものではありません。

そして、医院のホームページに芸能人が掲載されていても、それは医院の質を保証するものではなく、医療広告ガイドライン上は表現に注意が必要な領域です。「誰が通ったか」ではなく、「どんな資格の歯科医師が、どんな検査をもとに、費用とリスクをどう説明しているか」で医院を選んでいただければと思います。

裏側矯正やハーフリンガル矯正、装置選びについてのご相談は、無料相談のご予約ページからお申し込みいただけます。料金の詳細は料金ページ、当院に関するよくあるご質問はこちらをご覧ください。


監修者
中嶋 亮(銀座矯正歯科 院長/医療法人社団真美会 理事長)
日本矯正歯科学会認定医、ESLO(European Society of Lingual Orthodontics)Titular Member、日本デジタル矯正歯科学会学術理事。舌側(裏側)矯正を専門とし、国内外の矯正歯科セミナーで講演を行う。
最終更新日:2026年9月10日(初出:2022年10月15日)

参考文献

  • Ata-Ali, F., Ata-Ali, J., Ferrer-Molina, M., Cobo, T., De Carlos, F., & Cobo, J. (2016). Adverse effects of lingual and buccal orthodontic techniques: A systematic review and meta-analysis. American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics, 149(6), 820–829. https://doi.org/10.1016/j.ajodo.2015.11.031
  • Khattab, T. Z., Farah, H., Al-Sabbagh, R., Hajeer, M. Y., & Haj-Hamed, Y. (2013). Speech performance and oral impairments with lingual and labial orthodontic appliances in the first stage of fixed treatment: A randomized controlled trial. The Angle Orthodontist, 83(3), 519–526. https://doi.org/10.2319/073112-619.1
  • Long, H., Zhou, Y., Pyakurel, U., Liao, L., Jian, F., Xue, J., Ye, N., Yang, X., Wang, Y., & Lai, W. (2013). Comparison of adverse effects between lingual and labial orthodontic treatment: A systematic review. The Angle Orthodontist, 83(6), 1066–1073. https://doi.org/10.2319/010113-2.1
  • Oikonomou, E., Foros, P., Tagkli, A., Rahiotis, C., Eliades, T., & Koletsi, D. (2021). Impact of aligners and fixed appliances on oral health during orthodontic treatment: A systematic review and meta-analysis. Oral Health & Preventive Dentistry, 19(1), 659–672. https://doi.org/10.3290/j.ohpd.b2403661
  • Rossini, G., Parrini, S., Castroflorio, T., Deregibus, A., & Debernardi, C. L. (2015). Efficacy of clear aligners in controlling orthodontic tooth movement: A systematic review. The Angle Orthodontist, 85(5), 881–889. https://doi.org/10.2319/061614-436.1
  • 厚生労働省. (2018/令和6年9月13日最終改正). 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
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監修者

銀座矯正歯科 院長 中嶋 亮|東京都で裏側矯正を専門に行う矯正専門歯科「銀座矯正歯科」

院長 中嶋 亮 | Ryo Nakajima

日本大学松戸歯学部卒業後、同大学大学院にて歯科矯正学を専攻し修了。大学病院での研鑽を経て、2012年より「銀座矯正歯科」に勤務し、数多くの裏側矯正や複雑な症例に携わる。2021年に院長、現在は理事長として診療にあたる。見た目の美しさと咬合機能の両立を重視し、特に舌側矯正やデジタル技術を活用した精密治療に注力。患者一人ひとりの生活背景に寄り添い、長期的な健康と自然な笑顔を引き出すことを理念としている。

【略歴】

【主な所属学会】

【論文・学会発表】

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