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分院展開いたしません

――そして「女性専門」を続ける理由

裏側矯正のリアルを知っているからこそ、分院展開しない覚悟

 分院展開。現在もM&Aを含めて色々なありがたいお話もありますが、お断りさせて頂いております。ひとつの場所で、皆さんが私の患者さんとして責任を持つ──それが私のやり方です。ついでにもうひとつ大切な方針も。当院は女性専門(※男性は学生/ご紹介の方は診させて頂きます)です。今日は、その理由について。


1. 分院を作らない5つの理由

1)裏側矯正がメイン

 日本矯正歯科学会の認定医制度は、大学病院を基本とした専門研修施設で表側のマルチブラケット治療を修了することが最低条件になります。裏側矯正やマウスピース型矯正装置での治療は基本研修の内容に含まれていません。日本矯正歯科学会認定医の資格だけでは裏側矯正は難しいという事になりますね。銀座矯正歯科に通う患者さんの多くが口元の美しさと笑顔の魅力を両立できるFLB裏側矯正システムを選択されます。マウスピース矯正ではモニタリングシステムを使う遠隔治療も併用することができますが、裏側矯正は都度診断と細やかな対応を必要とします。矯正はデータだけでは完結しません。歯ならび、かみ合わせ、あごの位置、表情はデジタルでは測りきれない要素もかなり多いのが事実です。分院化はその判断と責任の所在を薄めてしまいますし、裏側矯正は本当に専門性が高いので分院展開とは最も遠い位置づけの治療だと考えています。

2)裏側専門は技工士の技術と機材への投資の証

 矯正治療はデジタルとの親和性が非常に高く、銀座矯正歯科ではほぼすべての治療内容にデジタルが関与します。ところが、デジタル機器は非常に高額です。元々はアナログで完結する治療であるところにデジタル機器を介入させることは利益率が低下します。健全な経営が出来なければ患者さん一人ひとりに向き合う良い治療を行うことができません。3D顔貌スキャン、CBCT、デジタルプランニング。機器もソフトも“最高の一式を一か所に集め、経験値を積み上げる方が、治療の再現性は高くなります。

3)チームの“呼吸”を崩さない

 矯正専門で分院展開する際に最大の障壁となるのは人材確保です。矯正専門医院の院長の殆どは大学医局で矯正の専門教育を修了しています。私の知るかぎり分院展開している矯正専門医院ではそのような人材の確保は出来ていません。統括院長として著名な先生が各医院を管理されているとは思いますが、患者さん一人ひとりに対して統括院長がケアできる環境ではないでしょう。専門性の高いチーム診療は一朝一夕で行えるものではありません。

 銀座矯正歯科には裏側矯正をメインに診療を行っている3名の歯科衛生士と2名の歯科技工士が勤務しています。私の考えでは裏側矯正を行う場合、常勤の歯科技工士は必須です。歯科技工士が常勤していない場合、装置の破損に対して即時対応することができません。装置の修理を外注すると、完成から再接着の予約まで治療が止まり歯が後戻りします。「矯正のプロ」を自称する歯科医師をSNSで見かけますが、プロといえば歯科医師免許を持っていればプロですし、専門教育を受けたという経歴でもないので何を自称しているのかよく分かりませんね。良い治療結果は歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のそれぞれがプロフェッショナルである意識と技術を持ったチーム診療から生まれるものです。裏側矯正メインで分院展開は、不可能です。

4)“たくさん診る”より“よく診る”

 一般歯科はメンテナンスで定期的に来院する患者さんの数が増えることで売り上げの目途が立ちます。近年の矯正専門医院の多くはトータルフィー制度を設定しているので、新患数が売上のすべてになってしまいます。つまり、契約すればするほど儲かるシステム。そのため毎月の支払いを低価格のサブスクリプションのように設定することで「この費用なら矯正できる」契約を設定する医院があります。数年前にはグルーポンなんてものもありました。私は格安が悪いとは思いません。それでも、医療を悪用した詐欺は存在し、マウスピース型矯正装置の評価は落ちたのはこれらの事件が原因です。矯正治療の目的は不正咬合の治療であり、契約することではありません。来院回転率より満足度の密度を重視し、予約枠を増やすために品質を下げるより、時間をかけてでも納得して頂きたいというのが私の信条です。

5)Face Driven Dentistryは“距離ゼロ”が強い

 Face Driven Dentistry(顔貌主導の矯正治療)では、通院のたびに顔と笑顔のバランスを検討しています。治療の初期段階では安心して通えているか、治療の中期ではあごの位置とかみ合わせが安定しているか、仕上げの段階では笑顔と顔のバランス。遠隔で口の中だけを見るより、できるだけ患者さんと同じ空間で共有し判断することでFace Driven Dentistryは達成しています。


2. 「女性専門」を続ける3つの理由

 多様性の時代に“性別”を話題にするのは慎重であるべき、という指摘があることは承知しています。また、経営を考えるならば男性の患者さんも受け入れる方が良いに決まっています。実際に女性専門を止めようとした時期がありました。経営の悩みを抱えているうちに、治療終了後のアンケートに「女性専門なので安心して通えた」というご意見を頂けたことで私の迷いは消えました。銀座矯正歯科はこれからも女性に安心して通院して頂ける矯正歯科専門医院でありたいと考えています。

1)安心とプライバシーの設計

 院内でお声掛けする際には基本的に番号札でお呼びしています。ただ、番号だけだとそよそしくなってしまうので、私は診療室内ではお名前でお話させて頂いています。院内の設計という点では銀座矯正歯科は完全個室ではなく、動線の共有もあるので完全なプライバシー優先ではありません。この点はテナントの面積もあるため、できる範囲で検討しています(改装するにも建築資材も高騰していますし…)。

2)ライフステージへの配慮

 女性特有のライフステージの変化ですが、基本的に矯正治療の妨げになるようなことはありません。裏側矯正であれば挙式や就職面接などの大事なポイントでも装置を外す必要もなければ、逆に「プチラミ」である程度の段差や隙間を消してしまうこともできます。妊娠・出産・授乳期、など体調が変わりやすい時期にはもちろん体調優先で通院して頂いて結構ですし、通院まで期間が開く場合はその間も治療を進められるように配慮します。痛みや装置の見え方、通院頻度の調整など、ライフステージに合わせたコミュニケーションを大切にしています。

@ginzakyousei

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3)装置選択と審美要件の優先度

 裏側矯正(舌側)やハーフリンガルなど、見え方・話しやすさ・仕事や生活との両立を最優先した装置選択を標準化しています。特に、矯正治療で「変化させたい」前歯の見え方や横顔と口元のバランスは表側の矯正装置では動きや変化量が分かりません。

※受け入れポリシーの補足
 当院は女性専門ですが、男性は「学生」の方、および当院患者様・医療関係者からのご紹介のある方に限り受け入れています。医療へのアクセスと当院の環境設計のバランスをとるための方針です。


3. 誤解のないように

 銀座矯正歯科も開院当初は女性専門ではありませんでしたが、数年前に女性専門医院へと方針変更しています。これは先代・深澤先生の銀座矯正歯科の将来を見据えた深謀遠慮の賜物でしょうか。経営を考えるならば男性患者さんも広く受け入れる方が良いに決まっています。分院展開の段落でも述べましたが、矯正専門医は数を見るよりも質を保つことの方が重要で、それこそが専門医院である理由と言えます。今まで通院されてきた患者さんにこれまで通り安心して通って頂くためにも、分院展開をしない。この方針は変更いたしません。


今週のお花はウィンターベリー。枝ものの迫力と果実の色が絶妙なおしゃれですね。

監修者

銀座矯正歯科 院長 中嶋 亮|東京都で裏側矯正を専門に行う矯正専門歯科「銀座矯正歯科」

中嶋 亮 | Ryo Nakajima

日本大学松戸歯学部卒業後、同大学大学院にて歯科矯正学を専攻し修了。大学病院での研鑽を経て、2012年より「銀座矯正歯科」に勤務し、数多くの裏側矯正や複雑な症例に携わる。2021年に院長、現在は理事長として診療にあたる。見た目の美しさと咬合機能の両立を重視し、特に舌側矯正やデジタル技術を活用した精密治療に注力。患者一人ひとりの生活背景に寄り添い、長期的な健康と自然な笑顔を引き出すことを理念としている。

【略歴】

【主な所属学会】

【論文・学会発表】